2012年ロンドンオリンピックのレスリング会場の様子。世界と戦う舞台の緊張感が伝わる。

トップアスリートと歩んで学んだ“考え方の整え方”

目次

はじめに|「できる」「できない」だけで終わっていないか?

トップアスリートと歩んで学んだ“考え方の整え方”

誰もが一度は、「できた・できなかった」という結果に一喜一憂したことがあるのではないでしょうか。
実は、私自身もトレーナーとして20代後半の頃、長くその思考にとらわれていた時期がありました。
「うまくいかない=自分が足りない」と決めつけてしまい、自分自身の成長を止めていたことに、今でははっきりと気づきます。

けれど、アスリートたちと向き合う中で、少しずつ考え方は変わっていきました。
特に、トップ選手たちの練習や日常には「確率を高める」という視点が深く根づいていたのです。

|第1章|オリンピアンの思考:“勝つ確率”を高める練習とは?

リオ五輪での勝利後、ガッツポーズを決める樋口黎選手。努力が結果につながる瞬間。
2016リオ五輪での準決勝・勝利後、ガッツポーズを決める樋口黎選手。努力が結果につながる瞬間。

「できる・できない」ではなく「確率」の問い

選手やプロで活躍するアスリートたちは、単に「できる・できない」で判断していません。
彼らの思考には、こんな問いが常にあります。

  • 「10回中、何回勝てるか?」
  • 「その確率を1%でも上げるには、何が必要か?」

練習で問われる“準備の質”

練習では、すでに得意なことを繰り返すよりも、

  • 想定外のパターンにどう対応するか
  • どんな状況でも迷わず動けるようにするか
  • 一生に一度のチャンスを、どう確実に仕留めるか

という視点で、自分を追い込んでいます。
こうした「逆算」「準備の質」勝敗を左右します。

第2章|私自身の変化:「できる/できない」を超えて

2015年、樋口黎選手の試合前に行ったテーピングサポート風景。集中力と準備の大切さが伝わる。
試合前に集中する樋口黎選手。調整と準備の重要性が現れるシーン。(2017年)

結果思考から「確率」への転換

トレーナーとして多くのアスリートを支える中で、私自身の考え方も大きく変わっていきました。
昔は、「今日はうまくいかなかった…」「まだできない…」と、結果に振り回されることが多かった。
でもある日、ある選手の言葉にハッとさせられました。

「今日は60%できた。あとはこの3割を埋めるだけです。」

点ではなく「確率」で捉える視点

自分の課題を“点”でなく“確率”で捉える。
この思考は、練習の目的を明確にし、次の一手が自然と見えてきます。
私自身もそのマインドを取り入れ、アスリートが実践していることを、まず自分がやってみようと決めました。
少しずつ、「これでいいんだ」と、自分自身を客観的に見られるようになってきました。

第3章|“なりたい自分”との距離を縮める練習

 松本隆太郎選手へセルフケアの指導を行う場面。競技力向上の裏には日々のケアがある。
日々のセルフケアが競技力の土台に。松本隆太郎選手への指導場面。(2015年)

「ズレを埋めるプロセス」とは?

練習とは、「ズレを埋めるプロセス」だと感じています。
でもそれは、難しい言葉ではなく、こう言い換えられます。

「今の自分」と「理想の自分」の間を、少しずつ近づけていく作業。

たとえば、小学生の子が「できなかった…」と落ち込んでいたとき、
「今日はどこまで近づけたと思う?」と聞いてみると

「3割はできた」「あともう少しで形になる」
と、気持ちが切り替わることがよくあります。


こうしたポジティブな問いかけの癖がつくと
モチベーションが上がるだけでなく、
自分自身を客観的に捉えられるようにもなっていきます。

第4章|セルフトークの変換:問いかけで思考を変える

状況 NGセルフトーク OKセルフトーク
試合で負けた やっぱり無理かも 出せなかった技/準備不足に気づく
続けるのがしんどい 意味ない この練習が〇〇にどうつながるか考える
練習でうまくいかない センスがない 再現性を高める方法は?と自問する

第5章|トップアスリートが実際にやっている“確率を上げる”準備

前田翔吾選手の試合直前、集中と信頼の中で行う最終コンディショニング調整。
レスリング 前田翔吾選手、試合直前のコンディショニングサポート。(2015年)

準備と目的の一覧表

視点 実践内容 意図
技術 得意技を複数パターンで再現 相手に読まれても対応可能に
状況対応 想定外シチュエーション練習 焦らず動ける力を育てる
メンタル 試合前に流れをイメージ 不安を減らし冷静に入れる
ケア 睡眠・栄養・疲労の調整 高い再現性をキープ
生活 日常のリズムを整える 情緒と体調の安定を保つため

これらすべてが、「勝てる確率を上げるための準備」です。
誰かと比べて“勝つ”のではなく、
「自分に勝つ確率を上げていく」という視点が、彼らの軸にあります。

まとめ|「できる/できない」ではなく、「どう高めていくか」

結果に一喜一憂するのではなく、
自分の取り組みが“どんな確率を高めているか”という視点を持つこと。
これは、アスリートに限らず、日常を生きるすべての人に通じる考え方だと思います。
私は、アスリートと一緒に“整える”という仕事をしながら、
自分自身もその思考に育てられてきました。
TMCでできることは、ただのケアや整体ではありません。
「考え方を整えるサポート」も、私たちが提供したい価値のひとつです。

番外|RIZIN選手の挑戦に学ぶ視点

RIZINファイター浅倉カンナ選手へのフィジカルトレーニングサポート。現場での実践的指導。
挑戦し続けるRIZINファイター・浅倉カンナ選手。体作りの積み重ねが強さの源。

ジュニアアスリートへのアプローチ

小学生の空手女子アスリートが試合前の足の疲労ケアを受けている様子。ラジオ波を使った施術中のシーン。
小学生空手キッズへの太ももケア。日々の整えが、未来の挑戦を支える。

最後に、アスリートのあなたへ

この文章は、高校生からプロまで、そして未来を目指すジュニア世代のアスリートにも届けたいと思って書きました。
「できる/できない」で判断しがちな時期もあるかもしれません。
でも、そうした思考にとらわれず、“確率を高める”という視点に気づけたとき、自分の可能性が大きく広がっていきます。

トップアスリートたちの姿から学んだのは、
勝つための練習とは、「負ける確率を下げる」「自分の“ズレ”を埋めていく」ことの積み重ねだったということ。

ここでいう“ズレ”とは、

  • 思っていたように体が動かなかったり、
  • 想定と違う状況で焦ってしまったり、
  • 頭では理解していても再現できなかったりする、
    そんな **「理想と現実のギャップ」**のことです。

そのギャップに気づき、少しずつ整えていくことこそが、
結果につながる“本当の準備”だと私は思っています。

これは特別な人だけができる考え方ではありません。
小学生や中学生のうちから、こうした言葉に触れておくことが、
将来の大きな土台になると信じています。

競技人生は、結果だけじゃなく、
“どう考えて、どう向き合ってきたか”で変わります。
あなたが進む道の中で、今日のこの言葉が、
少しでもヒントになっていたら嬉しいです。

—TRY MARK CONDITIONING 代表・加藤健治

2012年ロンドンオリンピックのレスリング会場の様子。世界と戦う舞台の緊張感が伝わる。

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TRY MARK CONDITIONINGより

加藤 健治(かとう けんじ)
スポーツトレーナー/整体師歴20年
TRY MARK CONDITIONING 代表

トップアスリートのパフォーマンスケアから、
がんばる大人の肩こり・腰痛まで。
“また動ける体”づくりをテーマに、
スポーツも日常も支えるケアを行っています。

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